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689話

張三は身を寄せて、肖宇だけに聞こえるほど声を潜め、神秘めいた口調で言った。

「宇兄、なんか酸っぱい感じがしなかった?」

「酸っぱい?」

まだ先ほどの話題に浸っていた肖宇は、張三のぼんやりとした言い方に一瞬反応できなかった。

眉をひそめて繰り返しながら、張三が指す方向を見て、ようやく彼の言わんとすることを理解した。

「あっ!」

肖宇は冷たい光を瞳に宿した小紅を見て、まるで新大陸を発見したかのように悟りの声を上げた。その声は思わず大きくなってしまった。

大げさなほど大きな声を聞いて、張三はまず手を伸ばし、黙れというジェスチャーをした。

効果がないと見るや、彼は立ち上がって肖宇の口を手で覆い、彼にゆ...