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520話

寂しげな秋の空、太陽が中天に昇り始めると、ようやく温もりが戻ってきた。

丸一日一晩休みなく働き続けた越可児は、書類の山に埋もれた机から顔を上げた。

窓から差し込む光の中、彼女は指を曲げ、まだ乾ききっていないインクの紙の上で軽く弾いた。

細い柳眉を上げ、浮かべた笑みには、絶対的な自信が滲んでいた。

「これらの内部報告書と外部データの分析を見る限り、越氏財団の現状は、数年前とまったく変わっていないわね」

「越正勲、あの老狐め、私の『無私の』援助を受け取ることにすっかり慣れてしまったのかしら?財団の資金の流れは自分の手中に完全に収めるべきだという道理さえ忘れて...