




4話
「あの娘、マジで最高だぜ」
「確かに最高だが、笙歌に入っちまったからには、俺たちの手には届かねぇな。どこかで欲求不満を解消した方がマシだぜ」
肖宇は近くで話す二人の男の声を聞きながら、たった二口吸ったばかりのタバコを足元に捨て、強く踏みつぶした。頭を上げてナイトクラブの大きな看板を見上げると、その無精そうな瞳に異彩が走った。
「何か変だな……」
肖宇は独り言を呟いた。最初は宋傾姿の異変に気づかなかったが、さっき彼女が三哥に無理やり引きずられていく時、必死に自分へ向けてきた視線が肖宇の心を激しく揺さぶった。
美しい瞳は乱れた髪に隠れ、涙に濡れていたが、肖宇はその中にある絶望を鮮明に読み取った。恨みでも色気でもない、ただ純粋で濃密な絶望だけがそこにあった。
それは風俗に身を落とした女性の目つきではなかった。
自分を最後の救いの藁と見る絶望の眼差しが、肖宇のずっと閉ざされてきた心の奥深くを刺し貫いた。
彼は顔を上げ、たった五文字のネオンサインを長い間見つめ、最後には深いため息をついて中へ足を踏み入れた。
一枚のドアが、二つの世界を隔てていた。
笙歌ナイトクラブの中は当然、至る所で歌と踊りで賑わっていた。カラフルな光が点滅するダンスフロアでは、艶やかな体が男たちに寄り添い、誘惑するように揺れ動いていた。暖かい空気には情欲を煽る匂いが漂い、見覚えのある光景なのに何か違和感を覚え、肖宇は眉をしかめた。
「宇哥、三哥を探しに来たのか?」
「ああ。どこにいる?」
肖宇は近づいてきた従業員に頷きながら尋ね、同時に周囲を静かに観察し続けた。
「三哥はさっき美人を連れて上のVIPルームに行きましたよ。何か用ですか?」
「ああ、用事がある」
肖宇は従業員が指さす方向を見て、無表情のまま階段を上がった。
肖宇は常連ではなかったが、笙歌のことは隅々まで知っていた。彼の記憶では、上階の一番大きなVIPルームは、並の人間が使える場所ではなかった。
「考えすぎだといいんだが」
深く息を吸い込み、肖宇は足早に部屋の前まで来た。両手を背中で組んで立つ二人の屈強な男は、彼の予想を裏付けていた。部屋の中の人物は確かに只者ではない。
「誰だ?」
鉄塔のような大男が冷たい視線を向けると、肖宇の身に纏う冷気はまるで雪解けのように瞬時に消え、満面の笑みを浮かべて近づいた。
「お二人さん、ご苦労様。一服どうですか?」
肖宇がタバコを差し出そうとした手は、男にがっしりと押さえつけられた。男の顔に浮かぶ冷たい表情は微動だにしない。もう一人の男は西洋スーツの中に手を忍ばせていた。
「そんな手は通用しねぇ。てめぇは誰だ?」
肖宇の顔から笑みが凍りつき、気まずそうに笑いながら半歩下がった。
「落ち着いてください。私は三哥の友人です。仲間ですよ。急用があって三哥を探しているんです。中に伝えてもらえませんか?」
彼の言葉が終わらないうちに、部屋の中から絶望的な悲鳴が聞こえた。
「やめて!お願い!やめて!」
どこか聞き覚えのある声に、肖宇の心は一気に沈んだ。二人の男が目配せをしている隙に、肖宇の目に鋭い光が走り、素早く体を寄せると、手刀が電光のように飛んだ。二つの鈍い音の後、鉄塔のような体が柔らかく地面に倒れた。
肖宇は屈み込んで銃を手に取り、男の顔を軽く叩いて唾を吐いた。
「俺が誰かだと?くそっ、俺はお前の宇哥だ!」
言葉が終わるか終わらないかのうちに、肖宇は足を振り上げてドアを蹴り飛ばした!
「バン!」
部屋のドアが激しく床に叩きつけられ、その巨大な音は恐ろしいほどだった。
肖宇の想像と違い、広い部屋には二人しかいなかった。裸の男は、殺気立った肖宇に恐れをなしたのか、隣のソファに身を縮め、両手で顔を覆いながら悲鳴を上げ続けていた。
「殺さないで、殺さないで!」
肖宇はその情けない男を一瞥し、豆もやしのような凶器を見て軽蔑的に鼻で笑った。
そして広くて柔らかなベッドの上では、同じく裸の宋傾姿が、頬を真っ赤に染め、目には春の情が満ちていた!