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890話

曲雪は一日前に南疆に到着した。

この任務のため特別に髪を切り、愛用の鞭にメンテナンスを施してきたのだ。

曲雪の後ろに座っている男は、実直な顔立ちながらも全身から殺気を漂わせている。かがんでいても曲雪より頭ひとつ分は高い。

その男こそ雷霆だった。彼は方柔柔に気を取られるでもなく、時折ドアの向こうに立つ男の方を見やっていた。

その男はやせ型で、まぶたを伏せて壁に寄りかかり、まるで眠っているかのようだった。

彼を知らない人が見れば、温厚で話しやすい人物だと思うだろう。

それに、確かに端正な顔立ちで、俗世を超越したような雰囲気を醸し出し、思わず好感を抱いてしまう。こういう男が学校にいれば、典型的な人気...