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720話

煙が、まるで夢幻のように部屋に漂っていた。

楊家の老当主の書斎で煙草を吸う勇気のある者は少なかったが、楊春華はその数少ない一人だった。

ただ、彼はかつて煙草を吸わない人間だった。一生学問を研究してきた老学者として、楊春華はこの手の嗜好品を心底嫌っていたのだ。

しかし、息子の楊動が国境を越えた草原で事件に巻き込まれて以来、彼は煙草を覚えた。

その後、楊動が無事に草原から帰還し、楊春華も一時は禁煙に成功したが、今回、次男がロシアで事件に遭ってからは、もう煙草なしでは過ごせなくなっていた。

一本の煙草を吸い終えると、楊春華はようやくため息をついて言った。「お父さん、そろそろ小慧にこの件を知らせるべき...