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577話

「ヤンさん」

葉山名乃はヤン・ドンの手をしっかりと掴み、何度も感謝の言葉を述べた。「ありがとうございます。大丈夫です、ただ道が少し滑りやすかっただけで」

「ああ、それならよかった。ほら、私が支えるから」

ヤン・ドンは手を上げて、革手袋の男をさらに遠くへ押しやった。「どけよ。見物人は兄さんの善行の邪魔しないでくれるか?」

革手袋の男は顔を真っ赤にして、しどろもどろになりながら脇に退いた。

二人は待合室に座り、葉山名乃が再三お礼を言った後で、ヤン・ドンはようやく尋ねた。「帰国便は何時なの?」

「帰国するわけではありません。アメリカに行くんです」

「あなたもアメリカへ?」

「あ、そうなん...