5話
「今、ここで飛びかかって、思いっきり一刀浴びせたら、奴はきっと避けられないだろう！」
文哥の思いが巡ったその瞬間、杨動が足を止めるのが見えた。
彼はびくりと震え、手の中の刃物もしっかり握れなくなった：「避け、避けられないよな？」
杨動は身体をまさぐるように何かを探り、再び文哥の方を振り返った。
これには文哥が本当に青ざめ、刃物も握りきれずにガチャンと床に落としてしまった。泣き顔よりも醜い笑みを無理に作って「あ、兄貴、ま、まだ何か？」
杨動は二本の指を口元に当て、ちょっと気まずそうに尋ねた：「タバコある？ちょうど切らしてさ」
「あ、あるよ！」
文哥は慌ててタバコとライターを取り出し、小走りで差し出した。
非常に満足げに一服吸った後、杨動はごく自然にタバコを自分のポケットに入れ、文哥の肩を軽く叩いた：「これも貸しにしておくよ、お前の家の住所を...」
「いりません、これはお供えものです！」
杨動の言葉が終わる前に、文哥は急いで言った。彼の顔色はすでにひどく青ざめており、ただこの男が早く立ち去ってくれることだけを願っていた。
杨動は一瞬言葉を詰まらせ、再び文哥に向かって「いい人だな」とつぶやくと、ようやくのろのろと出口へ歩き去り、皆に寂しげな背中だけを残した。
「くそ、あいつ演技うますぎだろ。自分を周潤発だとでも思ってんのか」
文哥がそうつぶやきながら小麗のところへ行って彼女を助け起こそうとした時、奥の部屋のドアが突然開いた。
三十歳前後の美しい人妻が、中からしなやかに歩み出てきた。
人妻は上半身に緩やかなニットを着こなし、胸元は二つの丸みによって高く盛り上がっていた。
下半身は小さなワインレッドのミニスカートで、白く柔らかそうな長い脚にはストッキングも履かず、足元には紫色に輝くクリスタルのハイヒール。全身が骨の髄まで熟れきった妖艶さを放っていた。
美人妻を一目見ただけで、文哥はすぐに視線をそらした。まるでもう一秒でも見つめれば重罪を犯すかのように：「め、媚姉さん」
人妻は文哥に構わず、出口の方を見つめ、瞳には異様な色が浮かんでいた：「まず、あの小僧が小麗の誘惑に耐えられたということは、欲望に対して非常に自制心があるということ。次に、一瞬で四人を倒せるということは、喧嘩の腕前もなかなかだということ」
文哥は顔を赤らめた：「媚姉さん、俺たちが役立たずで...」
人妻は相変わらず文哥を無視し、笑みを浮かべながら続けた：「最後に、彼はからかって小麗が自分の便宜を図ったとまで言いながら、お金のことも忘れていなかった。これは——厚顔無恥の持ち主ということね。ふむ、極上の男だわ。どうやら彼が私たちの求める人物みたい。でも最終的に採用できるかどうかは、私、媚姐が自ら試してみる必要があるわね」
文哥の目は星のように輝いた：「媚姉さん、あなたが、あなたが自ら出馬するんですか？」
人妻はくすりと笑い、眉までもが弧を描いた：「ダメかしら？」
……
正午を過ぎたばかり、空は灼熱で、木の上の蝉までもが日差しに萎れ、断続的に鳴いていた。
杨動はオフィスを出て、「くそったれ」と罵った。この暑さはあまりにもひどい。
しかし、暑さにも利点がある。それは街角で眩しいほどの美脚が、お金を払わなくても鑑賞できることだ。
運が良ければ、風が吹いてきた時、女の子たちのスカートの下にある色とりどりの光景も見られる。
もちろん、杨動のような紳士は、決してわざとそのようなくだらないことをするはずがない。
たまたま見えてしまうのは、それは不可抗力というものだ。
また一陣の風が吹き抜け、街角の女の子たちのスカートを揺らし、同時に杨動の唇の潤いも奪った。
杨動は唇を舐めた。もともと面接で急いでいたので水も飲まず、さっきもあんな血の巡りを良くするような出来事があったし...喉が渇かないほうがおかしいだろう。
前方にドリンクスタンドが見えると、杨動は足早に近づいた：今日は金があるし、冷えたビールでも買って一杯やるか。
彼がドリンクスタンドに着いたとき、ポケットの携帯が鳴り出した。
電話を取り出して着信表示を見ると、杨動の唇はさらに乾いた——これは怒りからくる熱さだ。
電話は段宏からだった。
段宏、つまり彼に仕事を紹介してくれたあの男で、杨動と同じく「未来孤児院」出身だった。
もちろん、段宏は杨動のように落ちぶれてはいなかった。彼は孤児院設立以来、最も成功した一人で、現在はある民間企業の主任を務め、月給は数万元は下らなかった。
「どうしてそんなに時間かけて電話に出るんだ？」
杨動が何か言おうとした瞬間、段宏に遮られ、彼は慌てて尋ねた：「面接はどうだった？美人社長はいたか？」
電話の向こうで、段宏の熱心な声は衰えなかった：「将来成功したら、俺のこと忘れるなよ」
「ふざけんな！」
本来、杨動はそれほど怒ってはいなかったが、段宏が向こうでニコニコしているのを聞くと、彼の胸に溜まっていた怒りが噴き出した：「お前は俺に仕事を紹介してるのか、それとも罠に落とそうとしてるのか？俺の拳が強くなかったら、間違いなく殴られてたぞ」
向こう側の段宏は一瞬黙り込んだ：「そんなはずないだろ、この面接は俺の妻の上司が手配したんだぞ」
「お前の妻の上司は一体どんな仕事を募集してるんだ？」杨動は不機嫌に尋ねた。「お前は前に面接を受ければ分かるって言ったけど、行ってみたらただのハニートラップだったじゃないか」
段宏はようやく説明した。彼の妻のあの女上司が、周りに優秀な独身男性がいないか妻に尋ねたそうだ。もしいれば、彼女たちの会社の美人社長の盾になってくれないかと。
というのも、その美人社長の年長者が、彼女に早く家庭を持つよう迫っているらしい。
彼女はうんざりして、こんな策を思いついた：高額な報酬で「彼氏」を雇うというものだ。
そして彼の妻も言っていた。一度杨動が採用されれば、間違いなく高給取りのホワイトカラーになれると。
結局のところ、それは美人社長の「彼氏」なのだから。