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1072話

夜は更けていたが、アルプルコ市の市庁舎向かいのホテルはまだ明かりが消えていなかった。

ホテルには大物が来ていると言われ、メキシコの最高指導者たちでさえこの人物を非常に重視し、警備員を幾重にも配置していた。

本来なら、カシリアスのような人間が来るべき場所ではなかった。

結局彼は麻薬密売人に過ぎず、聞こえよく言えば裏社会のボスだが、悪く言えば単なる下等なネズミ……ただ他のネズミより少し太っているだけだ。

しかしカシリアスは来た。もちろん自発的ではなく、彼はただの伝言役だった。

幾重もの厳重なセキュリティチェックを経て、カシリアスはあるドアの前に立った。

「安全は確保されています」

彼を案...