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580話

バスティアンの表情の変化をヤン・ウィリアムは見逃さなかった。彼はその理由も理解していた。アヴリル一家にとって、アヴリルは家の姫君のような存在だった。バスティアンも、彼の父親も、アヴリルを非常に甘やかしていた。彼らの家の当主がアヴリルを大変気に入っているからこそ、アヴリルはアルバイトに出ることさえ許されているのだ。

「お兄ちゃん」アヴリルはトレイから二杯のお酒を取り、最初の一杯を林浩に渡した。林浩は紳士的にそれを受け取り、バスティアンの目つきが一瞬険しくなった。それからアヴリルは自分の分のお酒を手に取った。

バスティアンとグラスを軽く合わせ、続いてアンナ、ヤン・ウィリアム、林浩とも杯を交わし...