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428話

その少女を助けたことは、林浩にとって大きな波乱を引き起こすことはなかった。あえて言うなら、ほんの僅かな影響があっただけだ。彼に起きた変化と言えば、ただ居場所を変えただけのことだった。どうせ彼は行き場のない人間なのだから。結局、今に至るまで林浩はその少女の名前さえ知らないし、知りたいとも思わない。

林浩の心の中には「家」という概念が消えていた。最愛の妻の生死は不明のままで、林家は完全に滅びてしまった。林家の滅亡は彼のせいではなかったが、それでも心の中には多くの自責の念があった。だから西欧に来てからも、林倾城がこの地にいることを知りながらも、彼女を探しに行くことはしなかった。ただヨーロッパの地を...