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316話

林老太太と別れた林衍は、林氏の祖宅の玄関まで歩いてきた。林衍はすぐに立ち去ろうとはしなかった。今回の別れは、おそらく生涯二度とここへ戻ることはないだろうと思ったからだ。

「十年か…丸十年もここを離れなかったのに、今度こそ出て行くんだな。ああ、そろそろ行くべき時だ。外に出て、いくつかの事を片付けなければ」林衍は林氏祖宅の門を見つめながら、思わず呟いた。

道一の姿がゆっくりと彼の背後に現れた。道一も同じく林氏祖宅の門を見つめ、黙り込んだ。しばらくして、道一は林衍を真剣な眼差しで見つめ言った。「もう少し長く滞在してもいいんだぞ。もしかしたら、今回は二度と戻れないかもしれないしな」

林衍は微笑み...