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692話

車は東南へ向かう。

正午の暖かな陽射しが車の屋根に降り注ぎ、その熱が車内に放射されていた。何とも言えない甘い香りが漂う車内に、さらなる怠惰さを添えている。

誰だって昨晩あれほど激しく求め合った後なら、心地よい満足感と同時に、しなやかな身体からの疲労も感じるものだ。

津門から青山までの三百キロの道のり、林陽の運転技術なら間違いなく二時間半以内に到着できるはずだった。

けれど彼女はごく穏やかに車を走らせていた。

蘇総が眠っていたからだ。

美女は美女だ。たとえ寝ている時に口角から光る涎が垂れていようとも、その妖艶な姿は人を酔わせるほど魅力的だった。

林陽は何度も蘇総が車内で眠る姿を見て...