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657話

京大は芸術学校ではないが、蘭香君はアジア全土で人気を博すスーパースターとなった。安晴たちにとって、彼女は京大の伝説そのものだった。

伝説からの贈り物をもらえるということは、それ自体が大きな記念的意義を持つ。

しかし沈岳があんな言葉を口にした瞬間、怒りの視線が一斉に集まり、安晴は慌てて俯き、地面に穴があったら入りたいと思った。

安晴は姉が嘘をつくはずがないと認めていた。義兄は女性を口説くのが上手だ。

でも蘭香君はどんな人だ?

彼女は世界中を飛び回り、何百万人ものファンに女王として崇められている。どんな人にも会ってきたはずだ。清純な展社長や、スリルを求める豪門の奥様、悪名高い葉修羅のよう...