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251話

「岳兄、行かないでくれないか?」

満目に期待を込めた侍女頭のその問いかけに、沈岳は「もちろん」と答えたかった。

だが、そう言うことはできなかった。

彼は車を路肩に寄せ、遠くに見える小さな林を見つめながら、長い沈黙の後、ようやく首を横に振った。

行かないわけにはいかないのだ。

去るか留まるか、その結果については何度も考え抜いていた。

去ることの利点は、留まることよりも遥かに大きい。

展小白に心を煩わせることもなく、蘇南音の婚姻危機も完全に回避でき、コウモリの怪や聞燕舞の背後にいる夫人からも逃れられる。

そして確信していた。自分が去っても展小白にはさほど影響はないだろうと。結局、葉...