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214話

沈岳は虎の威を借りて人を騙すようなことを軽蔑していたが、大きな背景と来歴を持つ葉修羅に、そうするよう強いられていた。

それなら彼も自分の切り札を見せるしかない。

沈岳の切り札とは、ズボンの裾をまくり上げ、任警官に間近で見せた「残魄」の黒い短剣だった。

黒刺の柄は、灯りの下で不気味な黒い光沢を放ち、蝋石法で刻まれた「残魄」の二文字の篆書と、その「一」の字は少し不鮮明ながらも、一目で見分けられるほどにはっきりしていた。

まさしく残魄の黒刺だ!

任明明の瞳孔が急に縮んだ。彼女の心の声が叫んでいた。「彼、彼はなんと一月の悪徳商人・向南天の弟子だったのか。道理で強いはずだ、私でさえ敵わないなん...