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1084話

世の中に存在しない異香がある、それは「蝶恋花」と呼ばれる。

この異香が美森谷地の黒い金字塔から漂い出ると、それは猛毒となり、武元明たちを極めて悲惨な死に追いやる。

しかし、賞月城下の宋賞月の体から発せられる蝶恋花は、強力な春の薬となる。

だが庄純にとって、蝶恋花は誰かを追跡する最大の武器なのだ。

その香りは特定の神経を刺激することはなく、沈岳にとっては純粋な処女の幽香にしか感じられず、深く一息吸い込むと陶酔してしまう。

陶酔してはならない。

沈岳は目が覚めた時に、庄という小娘に逆推されていることに気づくのが本当に怖かった。

男は血を流すことも、首が落ちることも、小周の姿をした観音...