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62話

人は、憧れの人や物を目にすると、自分が置かれている危険を見落としがちだ。特に夢見がちで、ロマンチックな少女たちが、心惹かれるジュエリーを見た時には尚更だ。

「あ!こ、これは英国の『絡繰(からくり)』ブレスレットではないか?」暗闇の中、男性の驚きの声が響いた。彼の言葉が終わるや否や、大広間は再び明るく照らし出された。

絡繰ブレスレット?それは一体何だろう?皆の視線は、驚きの表情を浮かべて立ち上がった馬副市長に集中し、先ほどの一瞬の停電のことなど完全に忘れていた。

このブレスレットはとても貴重なものなのだろうか?そうでなければ、ほぼプロ級の宝石鑑定家である馬副市長がこれほど取り乱すはずがない...