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1670話

「命だけはお助けを、師匠様!」悪鬼の声が響いた。

すると、黒い気の大半が消え去り、ほんの小さな一団だけが悪鬼の頭部に変化し、蒼白い顔を露わにしているのが見えた。

「この悪鬼め、人を害しに出てきておいて、まだ命乞いか?」話しながら振り返ると、女性の鎮長も同じく顔色を失って座り込んでいた。明らかに相当な恐怖を感じたようだ。

考えてみれば当然だろう。誰だって怖がるはずだ。これは彼女の世界観を完全に覆すことになったのだから。

「師匠様、私にも事情があるのです。あの筆立てに封印されたのは、夜になったら彼女の命を奪えと命じられたからです。もし彼女が死ななければ、私は永遠に中に閉じ込められてしまう。...