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432話

秦雪は車を走らせて、巴東の方へと急いでいた。

芳姉は机の上に足を投げ出し、目を閉じて少し考え込んでいると、外から部下がドアをノックする音が聞こえた。「芳姉、秦雪さんがお会いしたいと来られています」

馮軍が午前中に連行されたため、彼の経営する他の店舗は次々と閉店していったが、芳姉が取り仕切るこの巴東だけは通常営業を続けていた。これだけでも芳姉の手腕の凄さが窺えるが、彼女はここ数日、ある人物に警戒心を抱いていた。それが秦雪だった。

この秦雪は趙国強から派遣された人物で、以前から林浩と連絡を取り、他の勢力とも親しく付き合っていた。馮軍は前々から秦雪に注意するよう言っていたが、当時はまだ馮軍がい...