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212話

顔を上げると、星が密に瞬く夜空に一輪の月が端に掛かっていた。すでに深夜を過ぎていたようだ。

森全体が静まり返り、虫の声も鳥の鳴き声も一切聞こえない。異様な静けさだった。月明かりを頼りに下を覗くと、あの怪物はいつの間にか姿を消し、地面には大きな血溜まりだけが残っていた。

「女神経、トゥルー、大丈夫か?」林浩は必死に隣の大木を見やった。暗闇の中、ぼんやりとして良く見えず、人がいるようにも見えるし、いないようにも見えた。

返事がないので、彼はさらに声を張り上げて数回叫んだが、やはり何の反応もなかった。彼は不安になり始めた。「まさか二人とも俺を置いて逃げたんじゃないだろうな」急いで安全ロープを解き、木...