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612話

その老人が現れると、その場にいた全員が敬意を示した。

どんな身分であろうと、この老人の前では、誰もが自然と自分が一段低く感じてしまう。

英雄であり、功労者なのだ。誰が少しでも不敬の念を抱けようか?

「薛老太爷、失礼の意はありません。ただ私の好きな人を連れて行きたいだけです」蘇北辰は薛老太爷に軽く一礼した。

「だが、お前が連れて行こうとしている者は私のひ孫の嫁だ。連れて行きたいなら、まずこのわしが許すかどうか聞くべきだろう!」

薛老太爷の声には厳しさが漂い、殺気が満ちていた。

「薛老太爷、これは若者同士の問題です。ご年配の方が介入されるのは公平さを欠くのではないでしょうか」蘇北辰は淡...