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611話

司会者の言葉が終わるとすぐに拍手が始まり、会場の来賓たちも盛んに手を叩き始めた。ただその拍手の中には、どこか異様なものが含まれていた。暗黙の了解を持つ人々は、これから始まる「お芝居」を期待し始めていた。

「小琳、僕は……」薛驚雲はダイヤの指輪を取り出し、片膝をついて、前もって用意していた心からの言葉を口にしようとした。

「薛驚雲、もういい」

韓琳は平静な表情でそう言い放った。彼女の声は大きくなかったが、式典会場のワイヤレスマイクを通じて、瞬く間に国府ホテル全体に響き渡った。

一瞬にして、全員の表情が見事なまでに変わった。馬鹿でさえも、韓琳のこの一言が何を意味するのか理解できただろう。

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