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172話

「蔵鋒……」

麗姉の瞳孔が僅かに広がった。彼女が蔵鋒と接触して以来、初めて彼の失敗を目にしたのだから、驚かないはずがない。

もちろん、麗姉が欧皇を拘束して後退するという考えを持っていなければ、蔵鋒の行動様式からすれば、今頃欧皇の首は既に落ちていただろう。反撃の機会など与えなかったはずだ。

暗殺者は一撃必殺を旨とするが、麗姉のある考慮により、蔵鋒は初めて失敗してしまった。

だが幸い、蔵鋒は暗殺者であると同時に、優れた殺し屋でもあった。

「動きが速いな」

仮面をつけた蔵鋒が冷たく言った。これは心からの賞賛だった。しかし、それは彼が為す術がないというこ...