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659話

その薄紫の面紗の下には、繊細な肌と赤く潤った唇、整った白い歯並び、そして精巧で生き生きとした眉と目が覗いていた。服部桜葉の持つ色気は十分に心を揺さぶるものであり、亡くなった徳川正一が彼女の美貌に執着していたのも無理はなかった。

「それにこの面紗だけど、最初に会った時からずっとこうだよね。なぜ自分の顔を隠しているんだろう」方鋭は少し不思議そうに服部桜葉を見つめ、しばらくして自ら軽く笑った。「もしかして扶桑の習わしなのかな?」

「いいえ、習わしではありません」服部桜葉の瞳に一瞬迷いの色が浮かんだ。

服部桜葉は首を振ると、目の前にある女性の姿が浮かんできた。

「服部桜葉、心に刻んでおきなさい...