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236話

「いいえ、からかわないでください」と私は少し恥ずかしそうに答えた。頭をかきながら、林蓮とさらに少し世間話をしてから、立ち去ろうとした。

私は自分が救った老人が並の人物ではないこと、林蓮も普通の家庭の出ではないことを、この数回の観察と交流で気づいていた。しかし、私はただ純粋に人を助けただけで、他意はなく、ましてや恩返しを期待するようなことはなかった。

こういった人たちと関わり過ぎると、余計な面倒が生じるだけだ。だから私は早々に退散することにした。

車に乗り込み、エンジンをかけると、バックミラーには林蓮がぼんやりと立ち尽くす姿が映っていた。彼女とは所詮違う世界の人間だ。友達になどなれるはずも...