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621話

私は緊張のあまり彼女に触れることさえできず、呼吸すら必死に抑えていた。あまりの物音を立てれば、彼女が怖がって逃げ出し、目の前から消えてしまうのではないかと恐れていたからだ。

彼女は急いだりせず、ただ両腕を広げて私をしっかりと抱きしめてきた。その体は温かく、まるで陽の光を浴びているかのようで、心地よい花の海に落ちていくような感覚だった。

私たちはそうして静かに抱き合っていた。震える手で私も彼女を抱きしめ返すと、冷え切っていた心にようやく温もりが戻ってきた。

どれくらいの時間が過ぎたのだろう。彼女は優しく私の腕から滑り出ると、そっとボタンを外し、服を脱がせてくれた。

私はずっと動かず、ただ...