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1425話

昔、会社に勤めていた頃、同僚たちと冗談で「いつか成功したら、ここに住もうな」なんて話していたことを思い出す。

笑い話だったけれど、それは私たちの無力さと、心の奥底にある成功への期待の表れでもあった。

今、実際にその玄関に立っているというのに、心に何かあるのか、それとも世の中の無常さを感じているのか、あの頃憧れていた興奮や喜びはどこにもない。

すぐにドアボーイがスタッフを呼び、私は車のキーを彼に渡した。

友人に会うと告げると、ドアボーイはホテルの中へと案内してくれた。

複雑な気持ちではあったが、せっかくの機会だからと、あちこち見渡すことに夢中になった。

これぞホテルのロビー、その広さは恐ろしいほ...