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1064話

ここの建物は金ぴかの豪華さとは無縁で、むしろ簡素さを重視している。道端には小さな花や草が咲き、家々は青レンガに青瓦の屋根だ。

これほど人がいなければ、一見したところ心身を養うには良い場所だろう。

「ここはね、かつてはすごい大物がお住まいになったことがあるんだ」朱宇は歩きながら言った。

「どんな人?」私は少し驚いて尋ねた。

「真ん中のあの建物が見える?特別に改築されたんだ」大門を通り抜けると、中は青石で敷き詰められた小道になっていて、朱宇は遠くの赤レンガに黄色い瓦の二階建ての小さな建物を指さした。

私はその方向を見たが、レンガと瓦の色以外に特に変わったところは見当たらなかった。

「当時、重慶に遷...