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96話

地下の氷城の守備隊が退去させられた後、魔の姿は誰一人としてなかった。漠北君も彼が大人しく「出て行った」と思っているに違いなく、戻ってくるとは予想していないだろう。そのため、尚清華が寝殿前の廊下に戻った時も、まだ気づかれていなかった。彼はそこで足を止め、三人がかりでようやく抱えられるほどの巨大な廊柱を伝って屋根の梁まで登り、絶対に人に見つからない位置に腰を下ろした。

しかし、この位置は確かに他人からは見えないものの、自分からも他人が見えないというオチだ!

漠北君の冷たい声が響き、まだ怒りを必死に抑えているようだった。

「何しに来た」

見知らぬ若い男の声が笑って言った。「甥が位を継ぐというの...