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163話

「遺体の状態から判断すると、死亡時間は十二時間を超えていません。恐らく明け方に起きた事件でしょう」

「しかし不思議なことに、この階のホテル監視カメラを確認しましたが、昨夜から今まで、ホテルスタッフ以外に怪しい人物がこの階に来た形跡はありません。また、黄安の部屋に入った人間も一人もいないんです」

「それに、遺体の無残な状態から見て、被害者は間違いなく激しい苦痛を味わったはずなのに、夜間に異常な音を聞いたという報告もないんです」

蘇惜柔は表情を引き締めた。こんな難解な事件は警察署でも初めての経験だった。あらゆる点が不可解で、まさに迷宮入りしそうな事件だ。手がかりすら見当たらない。

陸塵は言...