Read with BonusRead with Bonus

1070話

小さな中庭には二階建ての小さな家があり、陸塵はそのまま二階のベランダへと上がった。

中庭の外には明かりがなく、陸塵は闇の中にうまく身を隠すことができた。

二階の一室から薄暗い灯りが漏れ出ていた。陸塵はその窓の外に隠れ、細心の注意を払いながらそっと中を覗き込んだ。

部屋の中では一人の男が背を向けて立ち、手には古風で神秘的な丹炉を持ち、何かを研究している様子だった。

陸塵は思わず眉を寄せた。その背中のシルエットがどこか見覚えがあるように感じたのだ。

さらに部屋から漂ってくるかすかな匂いも、陸塵にはどこかで嗅いだことがあるような気がした。

だが今はどうしても思い出せなかった。

「あの丹炉は一目見ただ...