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606話

しかし、彼も趙武に直接対質したくない事もあった。

皆が一杯飲み終えると、趙東は再び進んで酒を注ぎ回った。趙武が良い酒だと言っていた酒壺を手に取った時、すぐにこれが自分の父親が醸した酒だと見抜いた。しかも正月に趙武に贈った酒だった。

以前から父親の醸す酒が並々ならぬものだと疑っていた。そうでなければ馮相如たちがあんなに気前よく二十万も出すはずがない。今また趙武がそう言うのを聞いて、彼の心はより確信に変わった。

この酒は趙武の目には良酒だが、趙東にとっては趙有田が日頃の酒欲を満たすための普通の酒にすぎなかった。

何度も酒を回すうちに、趙東は席にいる全員がそれぞれ一斤以上も飲んでいることに気...