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1217話

「それじゃ」と言い終えるなり、趙東は軽々と竹籠に入った龍蝦を持ち上げ、立ち去ろうとした。

「小東、おばさんは人の噂なんて気にしないよ。そもそも村で私の悪口を言う人なんて、いくらでもいるじゃない?」

呉大橋のその言葉に、趙東は一瞬硬直した。

こんなにも率直で大胆な呉大橋を目の当たりにするのは初めてだった。

「ああ、わかった。じゃあ先に帰るよ」

そう告げると、趙東は竹籠を手に村へと歩き出した。

趙東の高くたくましい後ろ姿を見つめながら、呉大橋の心は乱れ始めていた。

あるいは、日に日に成熟していく趙東に対して、彼女の心はますます手放したくないという思いが強くなっていたのかもしれない。

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