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371話

「この匂い!」香草は一生忘れられないだろう、あの夜ビンが彼女に言ったその言葉を。

なぜなら、その言葉が香草の心に根を張り、ビンがあの意地悪な表情でその言葉を言った姿を思い出すたびに、香草はむずむずした気持ちになるのだ。そして、ビンが何度も彼女を守ってくれたこと、ビンが絶情崖から飛び降りた姿を思い出すと。

香草の胸は痛んだ。生々しく痛んだ。あんな馬鹿者がどうして崖から飛び降りたりするのか。

「あなたこそビンよ、あなたこそロバの糞団子みたいなビンよ」

香草はまた立ち止まり、真剣にビンを見つめて言った。

香草がしつこくビンの正体を断言することに、彼は心の中で感動していた。だが、正体を明かすことはでき...