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270話

もちろん、阿宾はまだ生きていた。そうでなければ、この先の素晴らしい物語は存在しなかっただろう。

阿宾自身も死を覚悟していた。体が急速に落下していく中、目を閉じて「ドシャッ」と粉々になる瞬間を待っていた。これでよかった、すべてが終わる。美玲姉さんにも、婆さんにも会える。生まれてから一度も見たことのない父母とも一緒になれる。そして生まれ変わって、また日安大拿一家の女たちと…来世でもあの兄弟と徹底的に争うのだろう。

ところが突然「カッ」という音とともに、落下速度が急に遅くなった。反射的に手を伸ばすと、蔓を掴んでいた。崖から突き出た木に服とバックパックが引っかかっていたのだ。その木の枝には蔓が絡み...