Read with BonusRead with Bonus

2668話

アビンはそれほど遠くに行かず、むしろドアの外で浴室の様子を窺っていた。中から何の物音も聞こえないことから、モリアには実際トイレの必要などなく、きっと彼女も中で色々と考え込んでいるのだろうと察した。アビンは二人がここまで来たのなら、次の一歩を踏み出せるはずだと思った。

このあとアダムスとの面会があることを考えると、時間が限られていた。もうぐずぐずしている場合ではない。

そこでドアをノックすると、中のモリアはびくりと驚いた。アビンがこんな時にトイレのドアをノックするとは思わなかったのだ。「誰?」

アビンだと分かっていながらも、彼女はそう尋ねた。

「僕です、奥様。お腹の調子が少し悪くて…入らせ...