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719話

二人の声が時折聞こえてくる。普通の会話だが、声はかすかに震えている。今、最も興奮しているのは私かもしれない。見えないからこそ、リビングで一体何が起きているのか、妻が本当に自制できずに、あの恐ろしいものに彼女の艶やかで器用な小さな手を伸ばしたのかどうか、全くわからないのだから。

約10分経過した。今の私にとっては一秒一秒が長く感じられる。全て片付けて、わざと音を立てた。もし気まずい状況なら知らせる意味で。

その後、彼らと少し話すつもりで振り返ると、リビングに着いた途端、妻が立ち上がり、洗面して休むと言って去っていった。

慌てふためいて去っていく妻の姿を見つめる。足取りが早すぎて、丸みを帯び...