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692話

今はそんなことを考えている場合ではない。妻はお風呂に入っていて、しばらく戻ってこないだろう。私は急いでパソコンに意識を集中させた。

窓際に置かれた寝室のデスクで、椅子に座ってパソコンの電源を入れる。スタンバイ状態に設定してあるのは、電源を切ったように見せかけているだけだ。

この古びたノートパソコンは起動に1分もかかる。その一秒一秒が、私にとっては耐え難いほど長く感じられた。

監視カメラの映像が記録されていることを確認し、さらに以前使っていなかった古い携帯電話も探してみると、そこにもリビングの映像が保存されていた。

少し安心したが、今見る勇気はない。妻が眠りについてからにしよう。

しば...