花都の逍遥

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620話

以前だったら義兄にこんなことを言っても絶対に理解してもらえなかっただろう。だが、今なら確実に分かってくれるはずだ。

私は彼に自分の心の「不安」を知ってほしかったのだ。

「金水、安心しろよ。梅子はお前をそんなに好きなんだから、お前から離れるわけがないだろう?」義兄は私の肩を叩いた。

「義兄さん、中には分からないこともあるんですよ。はぁ、この話はもういいです。あのお客さんはまだ来ないんですかね?」

噂をすれば影。

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、あの王さんという客が玄関に停めた車から降りてくるのが見えた。

「金水、お客さんが来たぞ!」義兄が言った。

「ああ、分かった。梅子を呼んできてくれな...