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1609話

しかし次の瞬間、私の指が黒影の拳に触れた途端、黒影は完全に呆然となった。彼は長い間その場に立ち尽くし、目を見開いたまま、目の前で起きていることをまったく信じられないようだった。

「ど…どうして可能なんだ?」

黒影は大いに驚いた。

彼の実力なら、世間で武を修めた者たち、いわゆる武者でさえ恐れるほどのもの。それなのに今日、五十歳ほどの、武術の心得もない老人に手玉に取られたのだ。

しかも、黒影の手はすでに痛みで麻痺し、感覚すらなくなっていた。

彼には信じられなかった。この老人がどうやってこんなことをしたのか。

本来なら、自分は私を暗殺しに来たはずなのに、今この瞬間、私のこの神秘的な雰囲気に少しばか...