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1316話

一刻の間、暗闇の中では誰も自分の表情を見られないことに気づき、何か言おうとした瞬間、涼やかな声が不意に響き渡った。

「ねぇ、私たちと踊らない?」

私はしばし呆然とした。生まれてこの方、こんなにも美しい声を聞いたことがなかった。

極めて冷たさを秘めながらも、どこか妖艶な響き。それだけではない。魅惑的な声色は人を虜にし、思わずその魔力に引き込まれてしまう。

さらには、姫君のようなツンデレな気質が、私の穏やかだった心を深くかき乱し、なかなか我に返ることができなかった。

私だけではなく、黒ずくめの少女の声に衝撃を受けたのは血月も同じだった。彼女の真紅の瞳には驚きが満ち、心が静まらない様子だっ...