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1307話

「触れた瞬間、柔らかくて涼しい感触が種から全身へと広がり、体が心地よくなると同時に、心まで自然と愉悦で満たされていく。」

「気持ちいい!」

深く考える間もなく、私の濁った眼が突如として光を放ち、少し下卑た視線で白夜を見つめた。

一刻ほどして、ようやく我に返り、口元に微かな弧を描いた。

「しっかり座ってな、出発するぞ!」

言葉が終わるか終わらないかのうちに、白夜の驚いた表情など気にも留めず、濁った老人の手がハンドルを撫で、足に少し力が入る。

車のエンジン音が響き渡り、それまで静かだった漆黒の鬼影の表面に艶やかな黒い光の流れが一瞬走った。そして瞬く間に一筋の黒光となり、遠くへと消えてい...