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1264話

「行くって?そんなことできるわけがないだろ」

言い終わるなり、彼は入り口の用心棒に目配せした。

二人の黒服ボディガードはすぐに意を汲み取り、前後に歩み寄って私の前に立ちはだかり、太い腕で行く手を遮りながら低い声で言った。

「お客さん、お引き留めします」

「ほう?」

私の足取りが止まり、濁った眸から鋭い光が漏れ出た。

「何の用だ?」

二人の黒服警備員がこれほど鋭い眼光を見たことがあるだろうか。一瞬頭が真っ白になり、息ができなくなった。

しばらくして、年かさの警備員がようやく我に返り、顔中に冷や汗を浮かべた。

「あ、あの、社長がお呼びです」

私は後ろを一瞥し、穏やかな瞳に何の波風も立たない。

「ど...