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121話

「いいえ、いいえ!」私は手を振り続けた。もし家まで来られたら、正体がバレてしまう。

他の人たちが口々に私を褒め始めた。

「おじいさん、そのお財布は私があなたを背負っていた時に落ちたのかもしれません。自分で探してみてください。私は行きますよ!」

「いやぁ、君は律儀だねぇ、せめて電話番号だけでも教えてくれないか?」

「結構です!」

私は肩の荷が下りたように診療所を出て、額に手をやると、汗でびっしょりだった!

急いで小走りに立ち去った。

アパートの近くまで来ると、人気のない角を見つけて、次に姿を現す時には、白杖をついた盲人になっていた。

この時間、義姉さんはきっと部屋に戻っていて、私がいないことに気...