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1162話

「初めて会ったのに、こんなに細やかに気を配ってもらえるなんて」小雅の心に、何か特別な感情が芽生え始めた。これまで私に抱いていた抵抗感も、少し和らいだようだ。

「気をつけて、踏まれないように」

「うん」

しばらくして、私と小雅はようやく人の壁を突破した。鼻先が新鮮な空気を吸い込むと、目の前が急に開けた。

「うわっ!」

小雅は目の前の光景を見るなり、思わず手で口を押さえ、驚きの声を抑えた。

人だかりに囲まれた地面には、老人が横たわっていた。口の端には赤い血の跡がついていたが、時間が経っていたためか、その赤い痕はほとんど乾いていた。

周りの人々の口からは、惜しむ声や同情の言葉が漏れ出ていた...