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53話

楚攸寧の声には不思議な安らぎの力が満ちており、彼女の焦燥としていた心が奇跡のように落ち着いた。

徐静姝は躊躇いながら手を握りしめ、一瞬小さな戸惑いを見せたが、それでも小走りで楚攸寧の歩調に合わせた。

売店に着くと、徐静姝はほっと息をつきながらも、少し慌てた様子で黒のサインペンを一本手に取り、すぐにレジへと駆け寄った。

店員がバーコードをスキャンし、「黒ペン一本だけですか?」と尋ねた。

徐静姝は2Bの鉛筆や消しゴムなど、たくさんの文房具を忘れていたことに急に気づき、胸がどきどきして、「ちょ、ちょっと待って」と言った。

急いで商品棚に戻ろうと振り向いた瞬間、鼻先が何か柔らかいものに触れた。

徐静姝...