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209話

「初九日、九疊雲が客房で目を覚ますと、淳璟が姿を消していた。

彼は宿の隅々まで探し回り、宿泊している全ての人に尋ね、裏庭の犬にさえ尋問したが、誰一人として九疊雲が描写するような若い公子を見かけたという者はいなかった。

小僧は、その日九疊雲が一人で宿を訪れたのであって、同行者などいなかったと言い、彼はおそらく寝ぼけているか、幻覚を見ているのだろうから、もう一度戻って半時辰ほど眠れば正気に戻るだろうと言った。

九疊雲は唇を引き結んで黙っていたが、突然眼光が鋭く冴え、手を一振りすると、自分の斜め向かいに立っていた小僧が宙に浮かび、ドンと音を立てて柜台に叩きつけられた。ガチャガチャと音を立て、棚...