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155話

淳璟は柱に背を預けて雲良閣の外の階段に腰掛け、小さな黒犬の頭を撫でながら、雲沢蒼域の千鳴笳のことを考えて軽くため息をついた。

彼女があんなに急いで手紙を書いたということは、きっと火急の事態があるのだろう。だが……小さな黒犬が顔を上げて彼を見つめ、一声鳴いた。淳璟は眉を上げ、犬が最後の一切れのお菓子を食べ終えるのを見た。

「気に入ったみたいだな」淳璟は黒犬の首筋を撫でながら笑みを浮かべた。「お腹いっぱいになったか?」

黒犬は頭を上げて彼に撫でられるままにし、気持ち良さそうに目を閉じて「うむっ」と鳴いた。

淳璟は向かいにある九域客棧を見上げ、黒犬を抱き上げて高く掲げ、顔を上げて見つめながら笑った。...