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615話

以前なら義兄に対してこういう言い方をしても、きっと理解してもらえなかっただろう。でも今なら、きっと分かってくれるはずだ。

私は彼に私の心の「不安」を知ってほしかったんだ。

「大柱、安心しろよ。梅子はお前のことをそんなに好きなんだから、お前から離れるわけないだろう?」義兄は私の肩をポンと叩いた。

「義兄さん、いろいろと分からないことがあるんですよ。まあ、この話はやめておこう。あのお客さん、まだ来ないのかな?」

噂をすれば影、というやつだ。

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、あの王さんという客が玄関に停まっている車から降りてくるのが見えた。

「大柱、お客さんが来たぞ!」義兄が言った。

「ああ...