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1665話

「君だけを愛しているんだから!」

「阿弥陀仏、今生は縁がなかったということよ。もう帰りなさい。これからは私を探さないで」如夢はそう言うと、背を向けて歩き出した。

「いや、一緒に連れて行く!」男は如夢の袖を掴んだ。「俺は諦めない。君の夢の中の実体のない人間なんかに負けるわけがない!」

「やめてくれない?」如夢も焦った様子で言った。「見ている人がいるわ!」

男が振り返ると、塀の上にいくつかの人影が見え、すぐに引っ込んでしまった。

「知ったことか。今回は絶対に君を連れ帰る。もう尼僧になんかさせない!」男は食い下がった。

「離して!」

「一緒に帰ると約束すれば、離してやる!」

「まず手を離してから話し...